2019年7月29日
「国鉄分割民営化は大成功」に疑問を持ったので本当にそうなのかデータ的に調べてみた!!
先日、塾の政治経済の授業で「三公社民営化」というものをやりました。中身はというと中曽根内閣が電電公社、専売公社、国鉄をNTT、JT、JRに民営化したという話で暗記としてはとても単純です。
しかし、この時に「負債を抱えまくっていた国鉄を民営化してJRで負債を分け合ったら当時の国鉄の体質も改善されてサービス向上につながり’大成功’だったんだよ!」と言っていましたから、少し気になり、調べてみたところ間違いだらけであることが判明しましたので、訂正しながら現在の状況を考えていきたいと思います。
そもそも国鉄の民営化に踏み切る最大の理由となったのは先生のおっしゃる通り、債務を抱え込んだためで市場原理を導入することによって債務返済を目指そうとしたためです。
ここまでは良いのですが、ここからが1番間違えて認識してはならないポイントでこの時に債務はJR内のみで分割されたのではなく、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR貨物、新幹線鉄道保有機構、国鉄清算事業団に分割されました。
前出のJR4社に新幹線鉄道保有機構の割り当ては11兆6000億円、残りの25兆5000億円は国鉄清算事業団の持分とされました。
JR内で分けたとしても間違いではありませんが、主にそれを担当したのは国鉄清算事業団です。
JR北海道、JR四国、JR九州の3島会社とされ、民営化時から赤字が見込まれた会社は債務を免除されました。
国鉄清算事業団とは何か。
国鉄清算事業団とは国鉄が保有していた土地を整理したり、JRの株を保有したりしてそれらの資産処分によって長期債務の返済を目指そうとしたものです。結果はどうだったのかというと失敗しています。この時点でそもそも国鉄の民営化は「大成功」と称してはいけないのです。
何が起きたのかというとそもそも国鉄の資産は国鉄改革法によって売却する土地の評価額が簿価によって決まっていました。適正な価格設定ならば良いのですが、それは市価と比較すると不当なほどの安さであったと言います。
さらに大きな資産であった旧汐留駅跡地やJR東日本の株式などについてはバブル経済の最中であったことから「地価や株価の高騰を煽る行為」として東京証券取引所への上場や売却を国が規制したのです。
その後、これらの資産はバブル崩壊後に売却されますが、当時の見積もり以上の安価となり、返済計画に大きな狂いが生じます。
そもそも国鉄の債務返済にあたっては大手企業の清算で適用されることがある「債権放棄」、「利払い停止」が実施されず、さらに清算事業団には「事業利益」がないことからついには長期債務を返済できず、一部をJR3社に追加負担を求める形になり、残った30兆円の長期債務は返済されないまま1998年に法律の定めによって解散。増大してしまった債務はその後は日本政府が一般会計に組み込み、たばこ特別税として徴収することで返済を目指しました。
この債務返済のほかに現在に至るまでの問題として残るのは先ほども出てきた3島会社です。
特にJR北海道では人口減少などの影響もあり、鉄道事業ではもちろん、国からの助成金を投入しても赤字となっています。それに対して国土交通省はJR北海道の経営に介入し、経営改善を図っています。最初から赤字が見込まれていた3島会社を本州のJRと一体にしなかったのは民営化時にその理由の一つに含まれた「地域密着」のためとされます。民営化30年となった今になってその施策が一部裏目に出ており、一部では再国有化した上でその後、JR東日本に吸収させるべきだという意見も出ています。
各地で様々な経営努力が行われる中でそれを「大成功」に片づけず、問題意識を持って知っていく必要があると感じます。
「地域密着」にあるように鉄道は人々の足です。なくてはならないものです。その重要性は東海道新幹線だろうとローカル線だろうとそこに住んでいる人からすれば変わりません。「東京一極集中」、「人口減少」の影響は思わぬところに出ています。
※今回最初に出てきた政治経済の先生の話ですが、とても良い先生でわかりやすい先生です。あえてわかりやすいようにこのような説明にしたのかもしれません。
※今回の話は調べた上で掲載していますが、誤りがあると思われます。ぜひ、コメント欄にて知らせてください。すぐに記事を加筆・訂正させていただきます。
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