2019年10月10日
災害時の「計画運休」 ズバリ計画運休をする理由はこれだ!
最近、台風や大雪の際に「計画運休」という言葉をよく耳にするようになりました。
それではそもそも計画運休とはなんなのか。
計画運休とは公共交通機関、主に鉄道が事前予告を行い、運転を取りやめることを言います。
主に台風や大雪があるとされた時に実施されます。「昔はこんなことはなかった」その通りです。
この計画運休は気象予測の技術が向上し、精度が高まっているために行える措置であり、実際には2014年にJR西日本が行ったものが初めてです。
2014年の台風19号の際に京阪神地区において台風の影響が出ると見込まれたため、JR西日本は前日に予告を行った上で16時から終日運休となりました。このときは実際にあまり被害が出ずに並行私鉄各線は平常運転を行ったこともあり、賛否両論がありました。
この計画運休の最大の目的は「混乱防止」と「安全確保」です。
まず混乱防止とは何か。
特に告知を行わず、台風がひどくなってから運転見合わせで運転再開見込は立ちませんとやると特に都市圏では会社などが通常通り稼働するケースが多くあり、帰れなくなった人たちが駅にごった返すということになるのです。この現象は夕方から接近してくる台風ではよくあったことで昔から問題になって来ました。しかし、鉄道会社から何時以降は一切運転をしません。と言われれば会社側も人を帰す必要があるので退社時間の繰り上げなどの対応を取ります。土休日では出かけることをやめようと考える人が増えます。つまり、「動くかもしれない」という状況をあえて作らないことで台風が来る時には家にいなければならないという状況を作り出すのです。
そして安全確保。まずは利用客側の安全確保を行うためです。台風が来ているのにもかかわらず鉄道が動くかもしれないからと駅に来られては鉄道会社側も利用客の安全を確保できません。特に最近の台風は大型化、強力化しているとされ、安全確保は課題となっているのです。そもそも駅に来ても列車は来ない状況を作ることで駅に人が来ないような対策をしています。そして列車側の安全確保もあります。事前に早めの運休決定をすることでその日向けのダイヤを作りやすくなり、ギリギリまで運転する場合に比べて危険なのに運転してしまったとか事故になってしまったということを防いだり、指令の混乱を防ぐ効果もあります。
ではこの計画運休は万能なのかというとそうでもありません。まだまだ始まったばかりともあり、課題が出て来ています。
第1の問題は何を基準に計画運休を行うかです。利用者への影響が大きいため、できる限りは運転を継続することが求められます。その中での判断はとても難しいのです。JR西日本では日本初の計画運休の翌年の2015年台風11号で計画運休を実施しなかったところ、各路線で運転見合わせが発生。大きな混乱をもたらしました。
京阪神エリアではその後も何度も計画運休が実施され、大きな被害を出した平成30年7月豪雨でも被害のない段階からの計画運休により利用者の安全を確保しました。その年の台風20号からは路線ごとの運休時間を提示することに。また、SNSや駅での案内を強化し、混乱を抑えていきます。
首都圏では消極的だった計画運休ですが、2018年の台風24号ではJR東日本で初の計画運休を実施。また、首都圏私鉄各線でも計画運休をしました。しかし、これは告知の遅さや翌日の運転再開後のダイヤ乱れにより首都圏は大混乱。
これについてJR東日本などは計画運休は必要としながらも早めの告知や告知方法の検討をするとしたのです。
国土交通省は計画運休について令和元年7月に原則として多言語による案内と幅広い方法による告知、計画運休の時間や運転再開時刻の具体的な提示を行うように求めています。また、情報提供タイムラインの作成を求めています。
その年、2019年の台風10号ではJR西日本が山陽新幹線などで計画運休を実施。2日前という早さで計画運休について発表を行ったことや利用者に計画運休についてが浸透していたこともあり、混乱は特にありませんでした。
しかし、台風15号ではJR東日本などの首都圏各線で計画運休後の運転再開が遅れに遅れた上、平日であったことから午後にかけても大変な混乱に。対応が求められています。
まだまだ途上の計画運休ですが、安全確保や混乱防止の観点から見ればかなり画期的なものでひとつひとつ課題を克服していきながらも続けていくべきと感じます。利用者も計画運休に理解を示して災害時の鉄道利用について考えていく必要があります。
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