日韓問題でも活躍!WTOって何?なぜ、自由貿易は推進しなければいけないの?WTO機能不全ってなぜ?【やさしい政治経済講座】

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今回は試しの意味で時事問題についてを解説することをやってみます。

私の知識がそもそも大学入試受験生レベルであることがありますので、簡単に時事問題について理解したい方や大学入試対策のついで程度で見ていただければと思います。
好評であれば毎週1回配信します。
今回は「日韓貿易紛争 WTOで日本勝訴」についてどのような意味なのか簡単にご説明したいと思います。
これを理解するにはまず、WTOについて理解する必要があります。このWTOという機関はクセの強い国際機関ながらかなり大活躍しているところでもあり、これを理解するとニュースで言ってることが理解できることが増えると思います。
WTO=世界貿易機関はそもそも1995年にWTOの前身である「GATT=関税と貿易に関する一般協定」のウルグアイ・ラウンドという話し合いでの協定に基づいて成立した国際機関です。WTOもGATTも自由貿易推進という基本姿勢にかわりはありませんが、GATTは「協定」であったのに対して、WTOは「機関」です。
WTOにはGATT時代から一貫している3原則があります。(3原則=自由・無差別・多角)
自由原則では「非関税障壁」の撤廃を求めています。非関税障壁は例えば「うちの国はこれだけしか輸入しません!」のような輸入数量制限など、保護的効果の強い規制のことです。保護的効果の強い規制をやめろというとリストが提唱するような幼稚産業の保護はどのように行えば良いのかとなります。それは「関税障壁」により行われるべきだとしているのです。つまり、「この商品には○%の関税をかけます!」とするべきだということです。この自由原則では関税、課徴金以外の保護手段は一切認めません。ただし、この原則には例外があります。その代表例が「セーフガード=緊急輸入制限」と呼ばれるものです。セーフガードは国内産業に対して重大な損害を与えかねないような事態には緊急措置的に輸入制限を行うことができるものです。
無差別原則では最恵国待遇と内国民待遇を求めています。
最恵国待遇は例えば「A国とは仲が良いから関税10%!B国はウザいから関税1000%!」ということをせず、どの国に対しても一律の「低関税」を適用するようにとしています。先ほどの例で言えば、A国に10%なら、B国にも10%を適用することが求められます。
内国民待遇は例えば「外国製品は性能高すぎて邪魔だから消費税30%!でも、国産製品は10%ね。」ということをやめるようにとしています。無差別原則の上では輸入品に対しては関税以外で国内産品と差別できないことになっています。
この無差別原則にも例外があり、一般特恵関税と言います。これは関税が負担となり、貿易自体を躊躇してしまう発展途上国に対して関税ほぼ0%という特別優遇された関税を設定できるものです。
最後の多角原則ではRound交渉という、多国間交渉の優先を求めていますが、WTOになってからは大きな成果を上げられていません。こちらの例外はリージョナリズムと言われる地域統合です。これはFTA=自由貿易協定、EPA=経済連携協定やEU=欧州連合、ASEAN=東南アジア諸国連合などを指します。
WTOにはGATTよりもかなり強力な貿易紛争処理権限があります。これが先日の韓国との貿易問題の中で出てきた「WTOで日本勝訴確定」のニュースです。ここでこのように思った方がいたかもしれません。「よく韓国は紛争処理に応じたなあ。」その通りです。実際、韓国は竹島の領有権をめぐる問題で日本が提案する「国際司法裁判所=ICJ」での裁判に応じておらず、解決していません。実はWTOの貿易紛争処理権限は申立国と相手国の話し合いで折り合いがつかない場合、申立国はパネルという紛争処理の小委員会に処理を付託できます。
申立国がパネル設置を提案すると、全加盟国で構成されるDSBと呼ばれるところでパネル設置決定を行います。このパネル設置(つまり判決が出されること)を相手国が阻止するにはDSBで決定させないという方法が存在します。しかし、WTOはネガティブ・コンセンサス方式(全ての加盟国が反対と言わない限り、決定される)が適用されるというかなり強い力を持ちますので、まず否決されることはありません。(上級委などの処理は今回は省略します。)
WTOで今回の日韓問題のようにWTO協定違反との判断が出た場合、相手国(今回は韓国)は違反部分を改善しなければならない(日韓問題なら反ダンピング税)のですが、もちろん相手国にも主権がありますので、無視することが可能です。無視された場合、申立国は「対抗措置」を取ることができます。対抗措置の内容をDSBに通知し、こちらもネガティブ・コンセンサス方式で承認されると(相手国からの疑義がなければ必要なし)実施できます。(ここまで言っておいて申し訳ないのですが、日韓WTO提訴に関しては日本完全勝訴とは必ずしも言えないような曖昧な判断を上級委(パネルの上位互換)が示しているため、今回は明言を避けさせていただきます。)
では、このWTOの存在意義について最後にお話しします。
世界はかつてブロック経済化という保護貿易主義の台頭により、第二次世界大戦の勃発という負の歴史を残しています。自由貿易は国どうしのつながりを保ち、経済的な面から平和を支えるのです。WTOは自由貿易を推進し、「自国さえ良ければ」という考えではなく、「世界の国々、みんなで発展」を目指す機関です。
つまり、WTO、さらには自由貿易は世界平和の上でとても重要な役割を果たします。各国はこれを推進するべきなのです。
そんな中で先日、WTOの紛争処理の一部を担う上級委の委員の選任をアメリカが拒否し、WTOが機能不全に陥りそうになっています。1995年の成立以降、自由貿易を守ってきたWTOに対してアメリカは協力的になるべきです。アメリカが主張するようなWTOの問題があるのだと考えるのならそれはWTOの中で話し合うべきことなのではないでしょうか。

※間違い等ございましたら、コメント欄にてお知らせください。

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