2019年11月8日
「列車」と「電車」の違いってなに?知ってて得する鉄道知識!
今回は細かいけど面白い「電車」と「列車」の違いについてご紹介します。
車両的な定義で言えば、列車というのは鉄道車両全般を指すもので電車というのは列車の中でも特に電気を架線などから得て走行するものを指します。列車の中でも電車以外のものを気動車といいます。
今回ご紹介するのは列車運行に際して区別される「列車」と「電車」についてです。
JRではこの2種類を運行上、明確に区別します。
なぜなのか。
それは国鉄時代にさかのぼり、東京や大阪の都市部では当時はまだ珍しかった電車が普及しました。しかし、地方に向かう比較的長距離を走るものに関しては相変わらず機関車牽引による客車が主流で運行管理が異なる電車と機関車牽引の客車列車はそれぞれ「電車」、「列車」として区別しました。
その後、電車は全国に普及し、客車列車はほとんどなくなりましたが、運行上の「列車」と「電車」の区別は残されたままとなり、非常にわかりにくいまま残っています。
みなさんが触れていちばんこの違いを実感するのはJR東日本の接近案内です。
こちらは東海道線の接近案内。東海道線は長距離を走りますから「列車がまいります」と案内されています。
続いてはこちら。
これは京浜東北・根岸線の接近案内。
「電車がまいります」となっています。
この差は放送でも区別され、東海道線では「本日もJR東日本をご利用くださいましてありがとうございます。今度の2番線の列車は19:32発 上野東京ライン高崎線直通 普通 高崎行きです。」となりますが、京浜東北線では「本日もJR東日本をご利用くださいましてありがとうございます。今度の10番線の電車は19:41発 各駅停車大宮行きです。」となります。
お気付きの方もいるかもしれませんが、この「列車」と「電車」は放送以外にも区別する方法があります。
それは種別です。
基本的に「列車」では普通列車が運行され、「電車」では各駅停車が運転されるのです。
例えば、宇都宮線や高崎線は普通列車が運行されますので列車ですし、京葉線や横浜線は各駅停車が運転されますので、電車です。
わかりやすいですね。
この区別があるからこその面白い例もあります。
例えば中央線快速電車。
中央線快速電車では快速しかないイメージですが、快速が全駅に止まるようになる平日なら中野や休日なら吉祥寺からは各駅停車と案内されますので、電車です。(しかも中央線快速「電車」だしね)
しかし、中央線の高尾から先の甲府方面では普通列車が運転され、こちらは列車です。
中央本線のダイヤを見ていただければわかりますが、中央本線には小淵沢始発立川行きとか、立川始発甲府行きなどの「普通列車」が運転されます。
これは3ドアの近郊形車両で運転される「列車」です。
この結果、発生するのは普通列車と各駅停車の並存です。
同じ大月行きでも各駅停車と普通があります。
停車駅は一切変わらず、違うのは車両です。
この場合、各駅停車 大月行きは高尾〜大月駅間で「列車」に直通し、普通 大月行きは立川〜高尾駅間で「電車」に直通していると考えます。
最大の例外はこちらの横須賀線です。
これは先ほどまでの話が大矛盾なのわかりますか?
「普通」にして「電車」なのです。
これに関してはどう捉えるかは意見が分かれるところですが、JR的には電車として捉えているようです。
なぜこのような矛盾が生じたのかというところですが、考えられるのは横須賀線に対する優遇措置です。
そもそも横須賀線は1886年に当時の陸軍大臣と海軍大臣が総理大臣であった伊藤博文に連名で建設を請議し、1887年に建設が閣議決定。
さらにはまさかの日本の大動脈、東海道線の建設費を流用。
そして東海道線との分岐地点に大船信号場を設置し、北鎌倉駅付近では円覚寺の境内をぶち抜く、鎌倉駅付近では鶴岡八幡宮の段葛をぶち抜き、強引であり、また超優遇を受けながら建設されたのです。
これは横須賀にある海軍基地へのアクセス路線とされたためで東海道線の支線という立場ありながら天皇陛下を乗せたお召列車が定期的に出入りするそれはそれは格の高い路線だったのです。
そもそも建設経緯からその後の扱いも含め、他の路線とは違った一面を持っていてこの区別にも特殊な配慮がなされたとしてもおかしくないわけです。
この列車と電車の見分け方には細かいところながら見分ける方法がもう一つあります。
こちらは東海道線の時刻表。
「東海道線 時刻」とあります。
しかし、京浜東北線を見ると「根岸線・京浜東北線(横浜線) 標準時刻」とあります。
これはどういうことかというと列車と電車の違いとして列車では各駅の発着時刻は全て決められています。
それに対して電車では発着時刻は主要駅のみ決められていて他の駅は「非採時駅」となり、明確な発着時刻は決まっていません。
主要駅以外でも発車標に発車時刻が表示されたり、時刻表があるのは通過時分を基にした参考時刻であって、あくまでも旅客案内上の時刻ということになります。
そのため、「電車」では「標準時刻表」というものが使用されます。
また、列車はダイヤが15秒単位で設定されているのに対して電車では10秒単位で設定されています。
京急では1秒単位だったり、性能に合わせたダイヤを組むという意味での違いでもあります。
ここでもご登場の横須賀線。
横須賀線内に非採時駅があることで列車と案内されるのに標準時刻表となっている湘南新宿ライン。
時代が進むにつれて列車運行も複雑化してきていて一概にこうだ!というものは崩れつつあるということです。よりよいサービスを目指して変わってきた日本の鉄道を一つ感じるところでもあるし、鉄道を使うときに気にして見ると楽しいかもしれませんね!
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