イギリス離脱で話題!EUが実はかなりすごいってご存知ですか?地域的経済統合をまとめよう!【やさしい政治経済講座】

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みなさんはEUをご存知ですか?

今では小学校でも習うような当たり前のものになってきました。今回はEUというもののすごさを少しみなさんに感じていただきたいと思います。
EUはリージョナリズム、地域的経済統合のひとつですが、これは以前お伝えしたWTOが担うグローバリズム、世界一体主義とともに自由貿易体制の二大柱となっています。
まずは地域経済統合について少しみていきましょう。

世界にはさまざまな地域的経済統合がありますが、地域経済統合には大きく分けて4つの段階があります。(本当はアメリカのベラ・バラッサが示した7つの段階が正しいのですが、今回は簡易的な4段階で示します。)
一番初めの段階は「自由貿易」です。これは最も初期の結びつきで加盟国「内」で関税などの障壁を取り払い、貿易を推進するものです。2段階目は選択式でどちらか一つを選んでも良いし、両方選ぶこともできるもので「関税同盟」と「市場統合」です。「関税同盟」は自由貿易で達成した域内関税の撤廃に加え、域外からの輸入品に対して共通関税を課すというものです。「市場統合」は貿易推進に加え、域内の労働力やカネの移動を自由化したり、域内に共通規格を設け、域内の結びつきをさらに強化します。
3段階目は「経済統合」です。加盟国間の結びつきを強め、加盟国で統一の経済政策を行うものです。この場合、国家が持つ主権の一部を加盟する地域的経済統合に委譲することになり、2段階目から3段階目には非常に高い壁があります。
4段階目は「政治統合」です。これは各加盟国の政府や議会を廃止し、共通の憲法の下で統一議会、統一政府が政治を行うもので実質的に地域的経済統合を一つの国として扱うことになります。これにも大変高い壁があると言われます。
現在、各地にある地域的経済統合の立ち位置を見てみましょう。
まずは北米のNAFTA=北米自由貿易協定(USMCA=アメリカ・メキシコ・カナダ協定に移行予定)は1段階目の「自由貿易」です。
東南アジアのAEC=ASEAN経済共同体は1段階目ですが、2段階目の「市場統合」を目指しています。
APEC=アジア太平洋経済協力は世界最大規模の地域的経済統合へ、1段階目を目指しています。
南米のMERCOSUR=南米南部共同市場は2段階目の「関税同盟」です。
アフリカのAU=アフリカ連合は1段階目を目指しています。
それではEU=欧州連合はどこなのか。
EUは3段階目、「経済統合」です。ECB=欧州中央銀行により単一通貨のユーロを発行し、金融政策も行われています。4段階目の「政治統合」を目指し、交渉を進めています。
では、EUがどのようにして世界で最も先進的な地域的経済統合になってきたのかをみてみましょう。
その歴史は1950年台に遡ります。
1950年にフランスのシューマン外相が石炭と鉄鋼の共同管理構想、「シューマン・プラン」を提唱します。これはヨーロッパで繰り返し行われてきた戦争の火種となっていたフランスと西ドイツの国境付近にある炭田を共同管理とすることで将来的な平和を目指すものでした。
どちらかというとフランス寄りにある炭田の共同管理を戦後復興で必死の西ドイツが見逃すわけがありません。当時、石炭は最も主要なエネルギー資源でした。さらにちょうどこの時にアジアでは共産主義の影響を受けた北朝鮮が資本主義の影響を受けた韓国に侵攻する朝鮮戦争が発生しており、分割統治により隣に共産主義の東ドイツを抱える西ドイツとしては戦勝国フランスとの連携による復興は急務でした。
それらの理由もあり、1952年にフランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国でECSC=欧州石炭鉄鋼共同体を立ち上げます。それでも戦争不安が拭いきれないことから1957年にはローマ条約がが締結され、「関税同盟」を目指すEEC=欧州経済共同体と原子力開発が可能だったフランスの技術を分け合う(西ドイツとイタリアは敗戦国で原子力開発が難しかった)目的でEURATOM=欧州原子力共同体が1958年に発足しました。これらで1段階目の「自由貿易」は達成されました。
1967年にはECSC、EEC、EURATOMを統合し、先ほどの6カ国でEC=欧州共同体を発足させ、これにより2段階目の「関税同盟」を達成し、EECの目的にも達します。
この流れの中でヨーロッパを引っ張ってきたイギリスは何をしていたのかというとECSCを批判したのち、1960年に独自にEFTA=欧州自由貿易連合を主に北欧の国々で発足しました。対抗馬だったのですが、1段階目止まりのEFTAはECに対抗できず、当のイギリスはアイルランド、デンマークとともに1973年の拡大ECに加盟しました。(EFTAは現在もアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインのEU非加盟4カ国で存在。つまり、イギリスなどはEU加盟時にEFTAを離脱)
これによりECは9カ国に増えます。
1980年台にギリシャ、スペイン、ポルトガルの3カ国が加盟し、12カ国に。
1987年に出された単一欧州議定書により、各国の政策のズレの是正を1993年から行うことになり、1992年にこれに基づき、マーストリヒト条約が結ばれ、1993年にEU=欧州連合が発足。2段階目の2つ目である「市場統合」を達成します。
さらに1990年台には15カ国まで加盟国が増えます。また、EFTAとの共同市場を開設し、連携を強化しています。
EUは3段階目を目指し、単一通貨の流通を目指します。
1998年にECB=欧州中央銀行を設置し、翌年から預金通貨を単一通貨に切り替え、2002年には現金通貨までが単一通貨ユーロに置き換わり、「経済統合」を実現させます。(当時からイギリス、スウェーデン、デンマークは未導入)
2004年には1997年のアムステルダム条約と2001年のニース条約による、東欧拡大方針に基づいてソ連崩壊により誕生した東欧10カ国がEUに加盟します。(経済的に格差のある旧共産主義国を入れるのはリスクの大きいことだったために一定の準備期間が設けられた)
その後、2007年にルーマニアとブルガリアが加盟、2013年にクロアチアが加盟したことで現在は28カ国となっています。
さらに「政治統合」ヘも交渉を進めています。
2007年にリスボン条約を結び、2009年に発効。これにより、EU大統領、EU外相が誕生し、国際会議にもEU代表として出席しています。
しかし、問題もあり、アメリカのトランプ大統領の影響で火がついた自国第一主義の煽りを受け、2016年にはイギリスが離脱を決定。EU議会でも反EUの政党が議席を増やしています。ギリシャ通貨危機をはじめ、PIIGSと呼ばれる経済が安定していない国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の動向も不安視されています。
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