2021年1月31日
〇〇線直通?!直通運転のメリットって何?なぜ直通運転をするの?
今回は直通運転について考えてみたいと思います。
直通運転という言葉の認知度がどれくらいかは分かりませんが、首都圏では鉄道を利用すると、かなりの確率で耳にすることになります。首都圏では年々直通運転ネットワークが拡大し、JRも私鉄も大変な規模のものとなっています。
今回はそんな直通運転について、メリットとデメリットをご紹介します。
首都圏でも規模の大きな直通運転と知られるのが、上野東京ラインです。主に東海道線⇄宇都宮線・高崎線・常磐線の間で行われ、東海道線に限っては早朝深夜以外のすべての普通・快速列車が宇都宮線、高崎線に直通します。一部列車は伊東線、JR東海の東海道線、上越線、両毛線、成田線にも乗り入れ、1都6県に跨る広大な直通運転ネットワークを構成しています。特に上野東京ラインは直通運転のメリットを感じされるものとなっています。
上野東京ライン開業以前の東海道線は東京駅の2面4線のホームを使い、折り返し運転を行っていました。また、朝ラッシュなどを終え、本数を減らすときには多くを高輪ゲートウェイ駅の横にある田町電車区(現在の東京総合車両センター田町センター)に回送していました。この対応を行うことのデメリットは一番本数を多くしている都心で折り返し対応を行うため、折り返し時間がタイトになり、遅延の原因となったり、ダイヤ乱れ時の混乱の原因となっていました。また、田町電車区は東京の真ん中にある車両基地で、できれば小さくして開発や売却に利用したいところです。
上野東京ライン開業後はどうなったか。
東海道線の全列車を上野東京ラインに直通させることで東京駅での折り返しが激減、深夜帯の一部のみになりました。東京、上野と停車すれば、あとは郊外に向かう列車となります。郊外に向かう列車であれば、徐々に本数を減らすことができます。一つの駅で折り返しを一手に引き受けるのではなく、古河行き、小金井行き、宇都宮行き、籠原行き、高崎行き…のように多くの駅で折り返し対応ができます。折り返しに使える時間が長くなり、遅延の防止、また遅延の回復が早くなります。さらに都心よりも地価の安い郊外の車両基地を有効活用できます。小山車両センター、国府津車両センターは最たる例でわざわざ田町に置かなくても、日中は小山や国府津に置いておけば良いのです。夜のラッシュ時には、小金井始発、国府津始発を運転すれば良い話です。その結果、田町電車区は規模を大幅に縮小することになりました。余った土地に作られたのが、高輪ゲートウェイ駅ということです。JR東日本が中心に街づくりを行うことになっていますので、上野東京ラインの東京〜上野間の建設費用よりも得られるお金の方が大きそうです。
利用客にとってもメリットです。
例えば、大宮から横浜に通勤したい人にとれば、上野東京ライン開業以前は湘南新宿ラインしかなかった選択肢に上野東京ラインが追加され、10分に1本、横浜への直通列車ができたのですから大きなメリットでしょう。
このような直通運転の取り組みを早くから導入したのが横須賀線、総武快速線です。
東京を途中駅として、郊外→都心→郊外と直通することで本数増強、運用の効率化を図りました。現在でも横須賀線、総武快速線に成田線、内房線、外房線、総武本線、鹿島線を加えて直通運転を行い、この直通を利用して成田エクスプレスも運転されています。
横須賀線を利用した直通運転は年々拡大し、2004年からは横須賀線の逗子・戸塚〜西大井駅間を利用した湘南新宿ラインが運転を開始し、湘南新宿ラインにおいては東海道線→横須賀線→埼京線→東北貨物線→高崎線→上越線→両毛線に直通するという直通運転の限界に挑戦しているようなものすごい列車が誕生しています。これにより、東海道線・横須賀線からの新宿への直通列車が運転を開始し、宇都宮線・高崎線からの池袋行きを湘南新宿ラインとして郊外に飛ばすことで運用の効率化を図りました。また、2019年には横須賀線の西大井〜武蔵小杉駅間を利用した相鉄線直通列車が運行を開始しました。相鉄線との直通運転として注目を集めました。(これについては今のところ、鉄道会社側の直通のメリットが小さいように感じています。)
例えば、横須賀線で輸送障害が発生したらどうなるかを考えてみます。
西大井〜武蔵小杉駅間が不通となることを想定しましょう。まず、横須賀線が止まります。総武快速線への遅れ波及を防ぐため、直通運転中止の取扱いをします。総武快速線への影響はないように見えますが、東京駅のキャパシティを超えた本数を運行する総武快速線では折り返し遅延と運用が合わないことに伴う、ダイヤ乱れが生じます。総武快速線の遅れは房総各線に波及し、接続を取る房総南部の列車に波及します。
横須賀線を利用する湘南新宿ラインも止まります。すると、関東北部への波及を止めるため、新宿駅折り返しの対応を取ります。しかし、新宿駅のキャパシティはそんなに大きくありません。高崎線・宇都宮線の湘南新宿ラインの列車に遅れが波及します。湘南新宿ラインは東海道線も走ります。東海道線から横須賀線に入ることができなくなり、湘南新宿ラインの列車が各駅で運転見合わせとなります。とりあえず東海道線は平常運転をしますが、途中駅の待避線を湘南新宿ラインが占領するため、特急列車が普通列車を待たせる場所がなく、特急列車に遅れが生じます。大体の場合、ここの調整に時間を要し、東海道線の普通列車に遅れが発生します。東海道線の遅れは上野東京ラインに波及し、この時点で宇都宮線、高崎線のほぼ全列車が遅れることになります。滅多に見ませんが、高崎線特急に波及すると、群馬県北部、新潟県にも遅れが出ることになります。東海道線方面では直通や待ち合わせで伊東線に遅れが出ると、伊豆急行線に波及します。JR東海に遅れを持ち込むこともあります。サンライズに影響を出せば…とまあ考えればキリがないのですが、これが直通運転のデメリットです。全く関係のない路線で発生した輸送障害が下手すると首都圏を飛び越えて、他地方まで波及してしまうことがある点です。最近ではあえて早い段階で直通運転を再開して、キャパシティ超えによる遅延拡大を回避する取り扱いも見られます。郊外駅であれば、長時間停車をして運用とは違う列車として運行するなど(いわゆる一部運休)、時間調整によるダイヤ回復も狙えますから合理的と言えるでしょう。
私鉄線も直通運転を積極的に行なっています。
東急電鉄では田園都市線が東京メトロ半蔵門線、東武スカイツリーライン、東武伊勢崎線、東武日光線と直通運転を実施しています。田園都市線に関しては当初より直通運転を前提とした計画でしたから、直通運転を始めたからどうということはありませんが、東横線の方は効果が大きかったようです。東横線は横浜側ではみなとみらい線、渋谷側では東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線と直通運転を行っています。首都圏でもトップクラスの広大な直通ネットワークとなっており、神奈川県から埼玉県まで走破する列車がものすごい本数運転されています。現在の東横線の渋谷駅は副都心線との共用地下駅です。しかし、以前は地上にありました。東横線渋谷駅は東京の名物でもあり、立派な頭端式ホームが特徴でした。副都心線との直通運転開始に伴って、渋谷駅は完全地下化、それにより東横線渋谷駅の跡地は渋谷駅再開発に活用され、渋谷の利便性向上に役立っています。単に地下化すれば良かったといえば、それまでですが、東横線内から新宿、池袋まで直通で行けるのは大変大きいメリットかと思われます。さらに東武東上線、西武池袋線からすれば、横浜直通はもちろんのこと、副都心線、有楽町線との直通運転開始(東横線が参加するより前から行われていた)で池袋駅のキャパシティを超えて列車を運転できています。
京急電鉄も都営浅草線、京成電鉄、北総鉄道と直通運転を行っています。3分に一本される時間帯もある京急の電車を2面3線の品川駅で捌けるのは直通運転で都営線に流している効果が大きいかと思います。京成成田スカイアクセス線の開業により、成田と羽田を繋ぐ役割も果たし、国際線から国内線の乗継では重要な役割を果たしています。
小田急電鉄も東京メトロ千代田線、JR常磐線各駅停車と直通運転を行っています。直通運転と複々線を駆使して朝ラッシュ時間帯には尋常ではない本数の列車を運行します。
また、ロマンスカーは箱根登山線、JR御殿場線とも直通運転を行っています。
この他にも多数の直通運転ネットワークが存在します。関西圏でも直通運転は積極的に行われていて、阪神と近鉄の直通運転などは大きな話題となりました。今後も相鉄・東急直通線や羽田空港アクセス線のように直通運転は増えていくと見られます。
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